ディオール(DIOR) 2020年春夏メンズコレクションが、フランス・パリで発表。ニューヨークを拠点に活躍するアーティスト、ダニエル・アーシャムとのコラボレーションが今季の主役となる。
色盲の気鋭アーティスト ダニエル・アーシャム
ダニエル・アーシャムは、“フィクションとしての考古学”をコンセプトに、彫刻建築から、デッサン、映像作品までを手掛けるアーティスト。生まれながらにして色盲であることから、彼の作品の多くがモノクロカラーであることが特徴。また石炭や火山灰、ガラスといった素材を作品に使用することでも知られている。
キム・ジョーンズ率いるディオールはそんな彼の作品を、ファッションとして昇華。その特徴的な色彩だけでなく、作品のモチーフをコレクションの中へと落とし込んでいく。
ホワイトの世界に差し込む淡いブルーやピンク
今季はショー会場も、ダニエル・アーシャムとコラボレーション。「DIOR」の文字を象った大きなオブジェが立ち並ぶ、ピンク色の砂の上に、次々とモデル達が姿を現した。
コレクションを彩るのは、ダニエルの色彩感覚にちなんだ“ホワイト”をメインに。また時折差し込まれる淡いピンクやブルーといった色彩は、色覚補正メガネなどによって見た色合いを表現しているもので、しばし彼のアート作品にも登場しているカラーだ。
グラデーションカラーも
そんな“ダニエルの見える世界”を表現したかのようなグラデーションカラーも特徴的。オートクチュールを表現したオーガンザのプリーツをたっぷりとあしらったブルゾン、ジャケットの胸元から流れるように床に伝うスカーフなどには、ホワイトからブルーへと移り変わる美しい色どりがあしらわれている。
特徴的なグラフィック
今季はカラーパレットのバリエーションこそ控えめなものの、グラフィックや絵柄をあしらった洋服が目立つ。一見トランスペアレントに見えるショートスリーブのジップ付きジャケットは、ジョン・ガリアーノがメゾンを手掛けていた時代のアーカイブをモチーフにしたもの。また18世紀のフランスの伝統的な絵柄を、京都の絵付師が1つ1つ丁寧に描いたセットアップ、ディオールロゴを全面にあしらったグラデーションカラーのトップスも登場する。
アートピースのようなワードローブ
一見ミニマルに見える洋服でも、今季はアートな遊び心で溢れているのが面白い。ディオールロゴをフロントに配したニットは、会場に現れたオブジェのように、敢えて亀裂を入れたことで、鉱物のような硬質感を演出。また繊細な煌めきを放つベージュのオールインワンは、彼の作品にも組み込まれている“クリスタル”のパウダーを実際にあしらっているものだ。
コラボ小物も充実
小物アイテムにも注目したい。ブランド人気の「サドル」バッグには、ダニエルとタッグを組んだクリスタル入りモデルが登場。またリモワ(RIMOWA)とコラボレーションしたケースも多数披露された。